概要
2022年に放送された全5話の短編ドラマ 「卒業式に、神谷詩子がいないの感想を述べます。卒業式に主人公・神谷詩子が出席していないという場面から始まる物語について、その理由を考察し、作品のテーマ、魅力、そして気になった点について掘り下げていきます。
物語の展開
物語は、卒業式に主人公である神谷詩子が出席していないという場面から始まります。なぜ神谷詩子は卒業式にいないのか?その理由を、過去に何があったのかを、第1話から最終話まで順に追っていくストーリー展開になっています。
- 第1話: 2022年3月、卒業式が始まろうとしている。しかし、詩子の席は空席のままだった。2019年。高校1年 春。体育館の掃除当番として出会った神谷詩子、寺島史也、安藤しず香、工藤健介、宮田萌、小林真斗の6人。詩子の踊るダンスをきっかけに距離が縮まっていく。自分たちを「ファンファーレ」と名付け、動画投稿をしたりし仲を深めていく。高校1年 秋 文化祭。先輩たちのステージを見て来年の文化祭ではダンスでステージに立つことを誓う、詩子、しず香、萌。
- 第2話: 2020年、「ファンファーレ」の6人は高校2年生に。彼女たちは動画サイトに投稿したダンス動画が話題となり、新入生からも声をかけられるほど校内で有名な存在に。そんな中、緊急事態宣言発令により休校の知らせが。史也は、ふとしたきっかけで詩子の中学時代の友達である唯(新谷ゆづみ)、美月(安斉星来)と出くわし、詩子、唯、美月が中学時代のダンス部仲間だったことを知る。
- 第3話: 萌が公開している一人だけで踊るダンス動画。健介がしず香にキスをする写真。「ファンファーレ」のメンバーには自分の知らない一面があったことにショックを受ける詩子。その気持ちは詩子の過去の記憶を呼び起こす。2021年春、「ファンファーレ」の6人は高校3年生に。ファンファーレの距離はひらいたまま。詩子の進路希望書もいまだに白紙のまま。
- 第4話: 「ファンファーレ」の仲間に内緒で、顔を出さずに独りでダンス動画をアップしていた萌。しかし、そのダンス動画が炎上。それに気づいた詩子が電話すると「怖い 家にも帰れないの 」と萌。一度疎遠になってしまった「ファンファーレ」の仲間たちは手分けし、萌を探し出すことに。
- 第5話: 裏アカウントに詩子が書き込んでいた内容がコレコレに取り上げられたことにより、学校や会社、ファンファーレメンバーの親などを巻き込んだ大騒ぎに。しず香がこの炎上の件で、進学予定の大学から事実確認したいと言われるなど窮地に追い込まれるファンファーレ。
主な登場人物・キャラクター
- 神谷詩子(茅島みずき): 本作の主人公。
- 寺島史也(奥平大兼): 詩子の同級生。
- 安藤しず香(田鍋梨々花): 詩子の同級生。
- 工藤健介(中川大輔): 詩子の同級生。
- 宮田萌(莉子): 詩子の同級生。
- 小林真斗(杢代和人): 詩子の同級生。
評価点
神谷詩子のダンスの才能を示す演出と人間性
体育館で主人公の神谷詩子がイヤホンをしながら音楽を聴き、ダンスをしているところをたまたまメンバーの他の5人に目撃されます。そのダンスのシーンの演出が見事でした。
まず、ダンスが上手いということです。そしてそれを見たそれぞれのメンバーの反応や演技がうまく、このダンスに心を打たれた事が非常によく伝わりました。5人が神谷詩子に惹かれ、絆を深めていくきっかけになるのですが、その説得力がある演出でした。
神谷詩子のダンスの才能に惹かれたメンバーからダンスを褒められ、教えてほしいと言われるようになります。神谷詩子は少し嬉しそうでありながらも、どこか悩んでいる様子を見せます。こうした様子は、彼女の才能と後のストーリーで判明する中学時代の部活での失敗やダンス部がなく、中学時代の友人がいない高校選択にまで影響を与える孤独を象徴しています。
結果として、6人グループを結成することになり、グループ名は「ファンファーレ」となりました。「ファンファーレ」の結成は、彼女が本心では新たな仲間との絆を求めていることの表れと言えるでしょう。
緊張感をもたせる構成
第1話の冒頭で示された「卒業式に神谷詩子がいない」という結末に向けて、どのような出来事が起こるのかが、この作品のメインテーマです。第1話のグループ結成以降、友情が深まっていきますが、トラブルも発生し、人間関係が変化していきます。人間関係や絆が深まるほど、最終的に神谷詩子が卒業式にいないという事実がより際立ちます。そして、今後起こる出来事への不安や、メンバー間の対立が予想できます。
問題が解決しても、最終的には神谷詩子が卒業式にいないという展開になるため、解決してもまた新たな問題が起こるのではないかと予想できます。
この点が、物語全体の緊張感を高めています。
青春時代の葛藤とそれぞれの決意
青春時代は、自分の問題に精一杯になり、相手の気持ちや周りのことを考えられず、人間関係がうまくいかなくなることがあります。このドラマでは、そのような青春時代の葛藤が描かれています。
主人公の神谷詩子は、問題を抱えて逃げてしまうことがありました。中学時代の部活での失敗から逃げ、ダンス部のない高校に進学しました。進路に悩んだ際も、家庭環境や責任感から本心と向き合えず、結果的に就職を選びました。しかし最終的には、自分の心と向き合い、介護系の学校に進学し一人暮らしをすることを決意します。他のメンバーも、それぞれ悩みを抱えながら成長していきます。
一方、工藤健介はサッカーでの怪我により大学への推薦を逃しましたが、ファンファーレのグループ内では明るく振る舞い、自力で進学を決意しました。
小林真斗はメイクや美容に興味を持ちながらも、親の理解が得られず悩んでいましたが、ファンファーレの仲間たちの応援や励ましにより、自分の好きなことを追求する決意をします。
これらの決意は、ファンファーレの仲間たちの応援と、互いを認め合う言葉によって支えられています。
コロナ禍の描写
この物語は2019年から始まり、高校1年生の文化祭が開催されるものの、2020年にはコロナ禍が訪れます。マスクをして生活することや、みんなで集まって話したり、ダンスの練習や撮影などが難しくなる様子が描写されています。当時の時代や状況をリアルに表現している点は、この作品の特徴の一つと言えるでしょう。
最終話のダンス
そして、最終話ではファンファーレの女性3人がダンスを踊るシーンがあります。主題歌は第1話からEDで物語に寄り添うように流れ、最終話のダンス動画のライブ配信という形で使用され、物語と深く結びついています。そのダンスが主題歌とシンクロする演出は非常に印象的でした。
問題点
寺島史也という人物が、ファンファーレのSNSに安藤しず香と工藤健介が会っている写真を盗撮して投稿したり、宮田萌という顔を隠して活動しているダンスのインフルエンサーの情報を暴露する投稿をするなど、グループを崩壊させるような行動をします。
この人物の行動には納得がいかない部分もありましたが、神谷詩子が最終的に彼を許す展開には、少し違和感を覚えました。
しかし、この出来事をきっかけに神谷詩子は、過去のトラウマと向き合い、自己成長を遂げるきっかけになったため、結果的には良い方向へ進んだと言えます。
総評
「卒業式に、神谷詩子がいない」 は、青春時代の普遍的なテーマである悩みや葛藤を、リアルに描き出した作品です。
友情、恋愛、進路など、多岐にわたる問題に直面しながらも、互いに支え合い、成長していく登場人物たちの姿は、多くの視聴者に共感を呼ぶでしょう。
特に、神谷詩子が過去のトラウマを乗り越え、自分の進むべき道を見つけるまでの過程は、感動的です。
また、コロナ禍という時代背景を巧みに取り入れ、現代の若者たちが抱える問題を描き出している点も、この作品の魅力の一つと言えるでしょう。
「卒業式に、神谷詩子がいない」 は全5話という短い時間の中で、視聴者の心に深く残る多くのメッセージを詰め込まれたドラマです。


コメントを投稿