離職率とは
離職率とは期間内でどれだけの割合社員が辞めたかを示した率です。離職率の計算方法は、期間などの統一された定めはないですが、特に新卒採用の場合、一般的に入社から3年以内の離職者数を用いて離職率が計算されることが多いようです。
例えば、4月1日に入社した10人のうち、3年後の4月1日までに3人が辞めると、離職率は30%になります。
離職率の現状
学歴別卒業後3年以内離職率の推移
離職率を各学歴(中学、高校、短大、大学)別の平均離職率は以下のとおりとなっています。(各データは厚生労働省「新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」より作成)
中学新卒者の3年以内離職率
中学を卒業後に離職する人の割合は
1年以内 全体42%前後(単年42%前後)
2年以内 全体55%前後(単年13%前後)
3年以内 全体64%前後(単年9%前後)
特に1年目の離職率が高いことが特徴です。
高校新卒者の3年以内離職率
高校を卒業後に離職する人のおよそ割合は
1年以内 全体20%前後(単年20%前後)
2年以内 全体31%前後(単年11%前後)
3年以内 全体40%前後(単年9%前後)
中学卒業の離職率よりも低いですが、3年後には5人に2人が離職しています。
短大新卒者の3年以内離職率
短大を卒業後に離職する人のおよそ割合は
1年以内 全体18%前後(単年18%前後)
2年以内 全体30%前後(単年12%前後)
3年以内 全体41%前後(単年11%前後)
離職率は高校卒業者とほぼ同じです。
大学新卒者の3年以内離職率
大学を卒業後に離職する人の割合は
1年以内 全体13%前後(単年13%前後)
2年以内 全体23%前後(単年10%前後)
3年以内 全体31%前後(単年8%前後)
大学卒業者の離職率は、中学、高校、短大、大学の卒業者と比較して最も少ないですが、3年以内に10人中約3人が離職しています。
どの結果についても近年になって、離職率が上がっているわけではなく、ほぼ横ばいで推移しています。
離職率が高まることでどのような影響があるか
離職率が高まった場合、労働者と企業側から見るとどのような影響があるか、好影響と悪影響を整理すると以下のようになります。労働者のメリット
- 転職によって、様々な仕事を経験することで、適職を発見できる可能性がある。
- 転職市場が活性化した場合、様々なことに挑戦することができ、失敗をしてもやり直しがきく。
労働者のデメリット
- 収入が不安定になり、人生・生活設計が立てにくい。
- 会社で身につけたスキルが他社では通用しないスキルの可能性があり、その場合、その経験が無駄になる。
- 他の会社で通用する能力・ノウハウがない場合、再就職ができない可能性がある。
企業側のメリット
- 新卒採用以外にも、中途採用の市場に人材が増えるため、確保できる機会が生まれる。
企業側のデメリット
- 離職するまでにかけた教育コストや人材を採用するコストが無駄になる。
- 企業独自のノウハウが蓄積しにくく、技術の伝承がしづらく、生産性が低下する。
- 採用の案内の広告を出したり、採用の面接などで費用がかかる。
離職によって企業が受ける影響とは
1人が離職することで企業にどのような影響があるのかを図るために、退職した人材と同じ人材を獲得するまでにかかる費用を計算するとイメージがつきやすくなります。例えば、その人が辞めてから同じくらいの従業員となるまでにかかるコストは以下のものがあります。
1.従業員が退職・異動するときに発生するコスト
- 異動または退職にかかるコスト(退職金など)
- 穴埋めまでに本来あげられた売上など
2.従業員を新たに獲得するときに発生するコスト
- 求人募集
- 求人応募者の選択・採用
- 採用者の人材配置
- 内部からの昇進もしくは配置転換
3.従業員を教育するときに発生するコスト
- オリエンテーション(新しい環境などに順応させるための説明会・教育)
- OJT(実務を通じて行う教育)
- 指導者のコスト(社内で教育をできる人材を育てる・社外への指導や教育の依頼など)
従業員が離職する理由とは?
では、なぜ離職が進むのでしょうか?総務省統計局の調査によると、離職の理由として「労働条件が悪い」、「自分に向かない仕事だった」、「収入が少なかった」といったことが上位に挙がっています。15~29歳の離職理由
出典(「平成24年就業構造基本調査結果」(総務省統計局))より作成
離職理由から見た離職率を下げる方法
離職理由をみると働き始めるまでのイメージと合わないことが挙がっています。そのため、採用時には
- どんな業務があるのかは事前に提示する
- 何がデメリットで、そのかわりにどんなメリットがあるのか提示する
ただし、仕事の現実やデメリットを提示することで、応募者が減少する可能性もあるため、応募者が増えてほしいからと良い面ばかりを強調する方法もあります。しかしながら、現状やデメリットを隠したままで採用を行ったとしても、結局、離職が出てしまえば、改めて採用を行う必要があります。
一時的な応募者数の増減に因われず、「会社に残る人材の確保」を考えて採用をしていくことも企業にとって大切な姿勢となります。