商圏の市場調査は、小売店の出店やメーカーの新商品開発の際に行われる調査のひとつです。
小売業や飲食業であれば、その立地に出店することでどれだけの売り上げを見込めるのかを予想するために、また、その売上高で収支の採算が合うのかを事前に検証しておくために市場調査は行われます。
新商品開発においては、現在人気がある商品を調査し、その要因を分析することで、どのような商品を開発すると売り上げを見込めるのかを考えます。
例えば、新規にスーパーマーケットを開業する場合、出店予定地の100m先にすでに1店舗あるならどの程度の収入を見込めるのかという問いは、最も重要な問題の一つといえます。
スーパーマーケットは食品などの最寄り品を扱っているので、都市部なら半径1km程度が目安の近隣商圏で成り立っています。競合店が近隣にある場合、商圏の人口がどれくらい多いかによって採算性は変わってきます。
これらを加味して収入を予測するのは、調査規模によっては大きなコストがかかります。
そこで立地調査にポイントを絞って簡単にできる方法を紹介します。
たとえば、全国での市場規模が1000億円ある場合、個々の企業によって「1000億円もある」「1000億円しかない」というように、捉え方に差異があります。
全国で1000億円の市場規模であれば、国内全人口の約1億2700万で割ると、1人当たり787円程度となります。この事業を人口10万人の地域で行うなら、市場規模は7870万円ということになります。
もとが同じデータであっても、それを少し加工することで、各地域での市場性が見えてくることがあります。
市場規模のデータを手に入れ、自社の事業に合わせて加工を施すことで、新規参入のメリットがあるかどうかを検討します。
商圏地域内に競合店がある場合、その競合店とはシェアを奪い合うことになります。もし、各競合店の規模や販売力などの条件が全く同じなら、2店舗間の競争ではシェアは50%、3店舗間の競争ではシェアは30%となります。
実際には店舗の規模や品揃え、知名度(ブランド力)などの様々な要因が集客力に影響を与えますので、単純な等分にはなりません。しかし、同条件でも等分のシェアまでしか獲得できないことを考えると、確実に地域シェアを獲得するためには競合店以上の店舗規模、品揃えにする必要があります。
立地を検討する際には以下のことを考慮するのが基本です。
また、出店の検討に値する立地は以下の3タイプがあります。
国内では「繁華街」や「都市部の住宅密集地域」は非常に地価が高く、利益を上げるには坪効率の良い売場・商品構成が求められます。収益性の高いビジネスモデルが確立されていない場合、地価の安い立地を求めていくと「郊外の新興住宅地域」という選択に行き着きます。
例えば量販店やチェーンストアでは、不採算店の閉店と新規店の開店は当たり前に行われています。これは、出店当初は好立地としてスタートしたにもかかわらず、時間の流れで環境が変化し、閉店するということがあるためです。
他店との競争、他地域との競争という原因もありますが、当初見込めた商圏が外部から侵食されたことが原因となる場合も多くあります。
商圏タイプは以下の3つに分類できます。
この商圏タイプの中で、特に地域商圏・広域商圏の店舗で成り立っていた商店街が、他地域の興隆やショッピングセンター、大規模店舗の出店などに商圏を侵食された場合が問題になります。
商圏を侵食され、食品などの最寄り品の売上しか見込めなくなってしまった場合、地域商圏・広域商圏の集客力を見込んで出店した店舗は、近隣商圏からの集客だけで収入を得なければなりません。その結果、採算が合わなくなり経営が行き詰ってしまいます。
もともと、商圏人口3万人を見込めていた商店街が、交通事情の変化やショッピングセンターの進出により、商圏人口1万人以下に侵食されてしまった場合、その商圏人口でも採算の合う店舗しか生き残れず、ニッチ商品(市場規模の小さい商品)を扱っている店舗は、業務転換・閉店を余儀なくされてしまいます。
したがって、将来の周辺地域の発展・周辺地域への大規模店の出店なども考慮に入れて立地を検討することが重要です。また、閉店を回避するためには、商圏の侵食を予想して備えておくことが大切です。
ショッピングセンターや商店街に出店する場合、その関係者が想定している商圏の範囲があります。新聞折り込みチラシをどの地区に入れているのかを聞けばその想定範囲がわかります。
地域商圏・広域商圏は街の集客力によってその範囲が決まります。一方、近隣商圏を形成する販売店は、その品揃えに直結する店舗面積によって集客力が決まるといわれています。
そこで、街の集客力を比較することで商圏の境界を考える方法として「コンバースの法則」を紹介します。
コンバースの法則
A街とその近隣のB街があるとします。この2つの街に商圏の境界線があります。上記の式を利用すると、A街からその境界線までの距離を求めることができます。
商圏の境界線が把握できたら、その境界線に囲まれた範囲が想定される商圏となります。
市場規模と商圏内の人口・世帯数を把握するだけでもある程度の目安になります。また、商圏内に競合店が他に3店舗ある場合、自店のシェアを単純に25%と考えるだけでも見当をつけることができ、参入するメリットの有無が分かってきます。
次に収入予測をしていきます。
収入は、(1)個人のマーケットサイズ×(2)集客人数で計算します。
(1)個人のマーケットサイズを把握する方法は、その2で行った方法と同様です。
統計データや社内外データなどから各品目の全国の市場規模を用意し、これを人口で割り算します。これで、1人当たりのマーケットサイズが求められます。また、各品目の一人当たり支出額は、総務省の統計調査から拾える場合もあります。
(2)商圏内から集客できる人数を把握する方法は、「ハフ・モデル」を使います。
ハフ・モデルは商業施設の商圏測定方法の一つで、調査地区から対象店舗に集客する確率を求めるものです。この確率に調査地区の人口を掛け算して集客人数を計算します。
ハフ・モデル
調査地区からA店への来店確率を計算するとき複数の競合店がある場合は、分母の計算の際にA店・B店・C店・・・と全て足す必要があります。
最後に(1)(2)で算出した個人のマーケットサイズと集客人数で掛け算すると、収入の予測をすることができます。
しかしながら、全くの新規事業ではなく事例のある事業であれば、その事例の条件以上のものを揃えるだけで、前例以上の結果が期待できます。
新規出店の際はベンチマーキング(成功している他社事例にならう)が基本です。店舗規模や品揃えを比較対象の店舗と同様にすれば、その店舗と同程度の売り上げを見込むことができると考えられます。
次に地域の競合関係を考慮に入れて収入予測をしてみます。ハフ・モデルによるシミュレーションなどをしてみて、明らかに儲かるなら、成功の可能性は高いといえるでしょう。
各地域の状況はその地域で生活している人が最も精通しているはずです。
例えば、
・A地点から車で10分の範囲はどこまでか
・他地域からの車はB通りを通るが、地元の車はC通りを通る
・地元のDスーパーの食品は大手量販店よりも安くて新鮮である
などといった情報は、地元の人にとっては常識かもしれません。高い料金を払って他地域の人にこのような調査をさせるよりも、生活実感として肌に感じられる生活者の常識の方が優れているかもしれません。
常に「立地」「商圏」「市場規模」を念頭に置いて、
などを観察することが、「エリアマーケティングの基本」といえます。
小売業や飲食業であれば、その立地に出店することでどれだけの売り上げを見込めるのかを予想するために、また、その売上高で収支の採算が合うのかを事前に検証しておくために市場調査は行われます。
新商品開発においては、現在人気がある商品を調査し、その要因を分析することで、どのような商品を開発すると売り上げを見込めるのかを考えます。
例えば、新規にスーパーマーケットを開業する場合、出店予定地の100m先にすでに1店舗あるならどの程度の収入を見込めるのかという問いは、最も重要な問題の一つといえます。
スーパーマーケットは食品などの最寄り品を扱っているので、都市部なら半径1km程度が目安の近隣商圏で成り立っています。競合店が近隣にある場合、商圏の人口がどれくらい多いかによって採算性は変わってきます。
これらを加味して収入を予測するのは、調査規模によっては大きなコストがかかります。
そこで立地調査にポイントを絞って簡単にできる方法を紹介します。
【Step1】新規出店に向けて3つの要素を検討する
新規に出店をするうえで検討しなければならないことが3つあります。それは「市場規模」「競合関係」「立地」です。それぞれどのように考えたら良いのかを紹介していきます。(1)市場規模を検討する
新規参入のメリットがあるかどうかは、市場規模が大きいか小さいかでわかります。たとえば、全国での市場規模が1000億円ある場合、個々の企業によって「1000億円もある」「1000億円しかない」というように、捉え方に差異があります。
全国で1000億円の市場規模であれば、国内全人口の約1億2700万で割ると、1人当たり787円程度となります。この事業を人口10万人の地域で行うなら、市場規模は7870万円ということになります。
もとが同じデータであっても、それを少し加工することで、各地域での市場性が見えてくることがあります。
市場規模のデータを手に入れ、自社の事業に合わせて加工を施すことで、新規参入のメリットがあるかどうかを検討します。
(2)競合関係を検討する
売上高予測は、商圏内の市場規模×シェアによって求められます。商圏地域内に競合店がある場合、その競合店とはシェアを奪い合うことになります。もし、各競合店の規模や販売力などの条件が全く同じなら、2店舗間の競争ではシェアは50%、3店舗間の競争ではシェアは30%となります。
実際には店舗の規模や品揃え、知名度(ブランド力)などの様々な要因が集客力に影響を与えますので、単純な等分にはなりません。しかし、同条件でも等分のシェアまでしか獲得できないことを考えると、確実に地域シェアを獲得するためには競合店以上の店舗規模、品揃えにする必要があります。
(3)立地を検討する
商圏からの集客、地域の同業店との競合を考えますと、立地の要素は大変重要です。特に小売業においては、立地は利用者にとっての利便性に直結し、集客に大きく影響するため、どこに出店するかは最重要課題といえます。立地を検討する際には以下のことを考慮するのが基本です。
- 人口増加地域、将来発展が見込める場所
- 人通りが多い、わかりやすい場所
- 競合店舗が集中していない地域
- 店舗開設にかかるコスト(手間)が少ないこと
また、出店の検討に値する立地は以下の3タイプがあります。
- 繁華街
- 都市部の住宅密集地域
- 郊外の新興住宅地域
国内では「繁華街」や「都市部の住宅密集地域」は非常に地価が高く、利益を上げるには坪効率の良い売場・商品構成が求められます。収益性の高いビジネスモデルが確立されていない場合、地価の安い立地を求めていくと「郊外の新興住宅地域」という選択に行き着きます。
【Step2】商圏を想定する
店舗販売は来客があって初めて販売に結び付きます。来客がなく採算が合わなければ、店舗の閉鎖を余儀なくされます。例えば量販店やチェーンストアでは、不採算店の閉店と新規店の開店は当たり前に行われています。これは、出店当初は好立地としてスタートしたにもかかわらず、時間の流れで環境が変化し、閉店するということがあるためです。
他店との競争、他地域との競争という原因もありますが、当初見込めた商圏が外部から侵食されたことが原因となる場合も多くあります。
商圏タイプは以下の3つに分類できます。
- 近隣商圏(半径1km程度)… 食品など、最寄り品の商圏
- 地域商圏(半径4~5km程度)… 洋服など、買回り品の商圏
- 広域商圏(半径10km以上の範囲)… 各地域の中核都市の繁華街
この商圏タイプの中で、特に地域商圏・広域商圏の店舗で成り立っていた商店街が、他地域の興隆やショッピングセンター、大規模店舗の出店などに商圏を侵食された場合が問題になります。
商圏を侵食され、食品などの最寄り品の売上しか見込めなくなってしまった場合、地域商圏・広域商圏の集客力を見込んで出店した店舗は、近隣商圏からの集客だけで収入を得なければなりません。その結果、採算が合わなくなり経営が行き詰ってしまいます。
もともと、商圏人口3万人を見込めていた商店街が、交通事情の変化やショッピングセンターの進出により、商圏人口1万人以下に侵食されてしまった場合、その商圏人口でも採算の合う店舗しか生き残れず、ニッチ商品(市場規模の小さい商品)を扱っている店舗は、業務転換・閉店を余儀なくされてしまいます。
したがって、将来の周辺地域の発展・周辺地域への大規模店の出店なども考慮に入れて立地を検討することが重要です。また、閉店を回避するためには、商圏の侵食を予想して備えておくことが大切です。
【Step3】商圏を調査する
調査会社を利用せずに、自分でできる市場調査の手法について、まずは商圏設定の仕方を簡単にご紹介します。(1)近隣商圏
食品・日用品などは最寄り品です。消費者が最寄り品を購入する際には、距離が近く、品揃えが豊富で、価格が手ごろな店舗で購入します。半径500m~1km程度の範囲で条件に合う店舗を選択することが想定されます。(2)地域商圏・広域商圏
大規模店舗でもない限り、単独の店舗で地域商圏・広域商圏を獲得するのは困難です。しかし、ショッピングセンター内や地域で最も大きな商店街に出店すれば可能になります。ショッピングセンターや商店街に出店する場合、その関係者が想定している商圏の範囲があります。新聞折り込みチラシをどの地区に入れているのかを聞けばその想定範囲がわかります。
地域商圏・広域商圏は街の集客力によってその範囲が決まります。一方、近隣商圏を形成する販売店は、その品揃えに直結する店舗面積によって集客力が決まるといわれています。
そこで、街の集客力を比較することで商圏の境界を考える方法として「コンバースの法則」を紹介します。
コンバースの法則
A街とその近隣のB街があるとします。この2つの街に商圏の境界線があります。上記の式を利用すると、A街からその境界線までの距離を求めることができます。
商圏の境界線が把握できたら、その境界線に囲まれた範囲が想定される商圏となります。
【Step4】集客・売上を推計する
商圏が決まったら、次はその商圏内からどれだけの集客が望めるか、どれだけの売り上げが望めるかという目安を推計します。市場規模と商圏内の人口・世帯数を把握するだけでもある程度の目安になります。また、商圏内に競合店が他に3店舗ある場合、自店のシェアを単純に25%と考えるだけでも見当をつけることができ、参入するメリットの有無が分かってきます。
次に収入予測をしていきます。
収入は、(1)個人のマーケットサイズ×(2)集客人数で計算します。
(1)個人のマーケットサイズを把握する方法は、その2で行った方法と同様です。
統計データや社内外データなどから各品目の全国の市場規模を用意し、これを人口で割り算します。これで、1人当たりのマーケットサイズが求められます。また、各品目の一人当たり支出額は、総務省の統計調査から拾える場合もあります。
(2)商圏内から集客できる人数を把握する方法は、「ハフ・モデル」を使います。
ハフ・モデルは商業施設の商圏測定方法の一つで、調査地区から対象店舗に集客する確率を求めるものです。この確率に調査地区の人口を掛け算して集客人数を計算します。
ハフ・モデル
調査地区からA店への来店確率を計算するとき複数の競合店がある場合は、分母の計算の際にA店・B店・C店・・・と全て足す必要があります。
最後に(1)(2)で算出した個人のマーケットサイズと集客人数で掛け算すると、収入の予測をすることができます。
まとめ
新規事業を新しい場所で起こす場合、どうしても大きなリスクを抱えることになります。しかしながら、全くの新規事業ではなく事例のある事業であれば、その事例の条件以上のものを揃えるだけで、前例以上の結果が期待できます。
新規出店の際はベンチマーキング(成功している他社事例にならう)が基本です。店舗規模や品揃えを比較対象の店舗と同様にすれば、その店舗と同程度の売り上げを見込むことができると考えられます。
次に地域の競合関係を考慮に入れて収入予測をしてみます。ハフ・モデルによるシミュレーションなどをしてみて、明らかに儲かるなら、成功の可能性は高いといえるでしょう。
各地域の状況はその地域で生活している人が最も精通しているはずです。
例えば、
・A地点から車で10分の範囲はどこまでか
・他地域からの車はB通りを通るが、地元の車はC通りを通る
・地元のDスーパーの食品は大手量販店よりも安くて新鮮である
などといった情報は、地元の人にとっては常識かもしれません。高い料金を払って他地域の人にこのような調査をさせるよりも、生活実感として肌に感じられる生活者の常識の方が優れているかもしれません。
常に「立地」「商圏」「市場規模」を念頭に置いて、
- 地域の人の流れ
- 競合店の品揃え
- 競合店の客数
- 競合店での購入単価
などを観察することが、「エリアマーケティングの基本」といえます。