対人認知の歪みと対策方法


わたしたちは、「あの人は冷たい人だ」と他者を判断することもありますが、逆に「あなたは冷たい人だ」と他者から判断されることもあります。このような他者の判断(対人認知)は、人が自分の中で「判断」した結果であり、「事実」とは異なっている可能性があります。みなさんも、周囲から誤解されていると感じたり、あるいは自分が他者を誤解していたことに気がついたことがあるのではないでしょうか。

こうした対人認知の歪みは、①ステレオタイプ、②暗黙の性格観、③ネガティビティ・バイアスなどによって引き起こされることが明らかになっています。

①ステレオタイプについて

ステレオタイプとは(ステレオタイプの意味)

社会や集団の中に、当たり前のように浸透している先入観、型にはまった物事の見方、思い込み、認識などのことを指します。

ステレオタイプの具体例

たとえば、「女性(男性)だから…だろう」「〇〇大学出身だから…だろう」というように、性別や外見、学歴、職業など、ある特定の社会的なカテゴリーに入る人たち一般に関して、人々が抱いている固定観念のことを言います。

ステレオタイプによる思考パターンの歪みへの対策

このように捉えることは、すべてが誤りであるとは限りませんが、しばしば認知を歪める原因となります。先入観にとらわれず、そして型にあてはめるのではなく、1人1人が異なる人間であると考え、できるだけ相手をしっかり理解しようと努めることが必要です。

②暗黙の性格観について

暗黙の性格観とは(暗黙の性格観の意味)

自分の過去の経験をもとに、ある特徴を持つ個人は、それと論理的に関係すると思われる他の特性までもを併せ持つと考える傾向を指します。

暗黙の性格観の具体例

たとえば、「内向的な人は消極的である」と信じている人が、初めて会った人が内向的であった場合、同時にその人のことを消極的な性格に違いないと判断してしまいがちです。

暗黙の性格観による思考パターンの歪みへの対策

このような捉え方は、すべてが誤りであるとは言えませんが、しばしば対人認知を歪める原因となります。「○○だから○○である」、「A⇒B」と捉えるのではなく、1つ1つの事柄を切り離して考える必要があります。

③ネガティビティ・バイアスについて

ネガティビティ・バイアスとは(ネガティビティ・バイアスの意味)

ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が、人が行う判断に大きな影響を及ぼす傾向があることを指します。

ネガティビティ・バイアスの具体例

たとえば個人の過去の記憶でも、幸福な思い出や成功した経験よりも、辛い思い出や失敗した経験のほうが鮮明に記憶されたり、長く記憶に残る傾向があります。

ネガティビティ・バイアスが起きる原因

なぜ、こうしたことが起こるかというと、人間の生存本能による恐怖心が自我の根底にあるため、危険回避や失敗回避の方向性で解釈を行い、ネガティブな情報はポジティブな情報よりも大きな比重で捉えるということが、ネガティビティ・バイアスの要因として考えられています。

ネガティビティ・バイアスによる思考パターンの歪みへの対策

悪い事ばかり考えるのではなく、良い面を探してみることや、できるだけ物事をネガティブな部分とポジティブな部分の両方を見てみようと努めることが必要です。

自分がどのような思考パターンを持っているか探る

自分自身について理解を深めることは、より正確な他者認知につながります。自分はどういう「思考パターン」をもっているのか、どういうタイプの人を好ましく思い、どういうタイプが苦手なのかといった点について把握することが重要です。これに加えて①ステレオタイプ、②暗黙の性格観、③ネガティビティ・バイアスという3つに注意していくことで、早計に人を「判断」することは減り、他者に対する勘違いや誤解を防ぐこともできます。
「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか
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