今回の内容は価格差別についてです。価格差別とは同じ製品・サービスであっても買う人によって価格を変化させることです。
売り手は商品に価格・金額を付けて販売しています。買い手側(消費者)は商品とともにその価格を見て商品の購入を行うかどうかを検討します。
買い手は市場の中にたくさんいますから、その商品と金額を見て自分の気持ちと商品の金額に違いを感じる人も存在しています。たとえば、思ったよりも安い価格で手に入ると感じる(本来ならもっと支払ってもいいのにと思う)人や想定よりも高くて買うことをやめようと感じる(もう少し安かったら買うのに)という人など感じ方が人それぞれに異なっています。こうした人たちにそれぞれの希望に合った金額を示したらどうなるでしょうか?
思ったよりも安い価格で手に入ると感じる
(本来ならもっと支払ってもいいと思う)人の場合
本来はもっと高い金額でも購入する意向がありますが、売り手側から示された金額が1種類のため、その金額よりも高い金額を支払うことができません。売り手側からすると価格が下図のBの金額であっても、その人から赤色の部分の金額を受け取ることができましたが、実際には下図、青色の部分しか受け取ることができません。
高くて買うことをやめようと感じる
(もう少し安かったら買うのに)という人の場合
売り手側から示された金額が1種類のため、商品を「買う」か「買わない」の2つの選択肢なので、もう少し安ければ買うのにと思っていた場合、そのままの金額では買わない意向なので売り手は代金を受け取ることができません。つまり、この人に応じて価格を下図の部分まで引き下げれば、いくらかの売上をあげることは可能ですが、価格は下図の金額で提供されているため、その金額を受け取ることができません。商品の価格は1種類である場合単純に価格の上下だけで考えると、引き下げた場合に新たに得られる「売上②」と価格を引き下げたことで失う「売上①」を比較することが必要になります。
提供価格をそれぞれに変更した場合
1種類の価格で提供してた場合に得られる売上は、青色部分のみです。提供価格をそれぞれに変更した場合には、思ったよりも安い価格で手に入ると感じる(本来ならもっと支払ってもいいと思う)人には、高い金額で、もう少し安かったら買うのにという人には安い金額でそれぞれ提供した場合には、両方を上記の両方を手にすることができます。また、価格を1種類に限定した場合には、失う売上がありましたが、この場合には減少する売上がありません。
このようなことを行っている事例
上記2つの例では、同じ価格で提供していた場合、買い手に合わせた金額を伝えていた場合と比較して、どちらも売り手側からすると売上が少なくなります。売上を最大化するために価格差別を行っている事例を紹介いたします。1.映画館のシニア割引や学生割引
この割引は必ずしも長い間働いてきた年配者や、若い学生たちへのサービスというわけではありません。お小遣い(可処分所得:自由に使えるお金)がそれほど多くはない年配者や学生は、映画館の入場料が高くなれば、映画を見に行く回数を減ると考えられます。逆に、お小遣い(可処分所得)に余裕がある人の需要は価格が多少高くなっても映画を見に行く回数はそれほど減らないと考えられます。したがって、入場料収入を増やすために、入場料は年配者や学生と比べて高く設定しています。
2. クーポンシステム(割引券システム)
顧客はクーポン券を利用するまでに手間と時間をかけなければなりません。小さく切り取って、紛失しないように財布に入れて、しかもそのことを忘れないうちに利用可能期間以内に使わなければならないからです。そもそも、価格に敏感ではない人は、手間や時間をかけてまでクーポン券を利用したいとは思いません。(そもそもクーポン券があるかどうか調査をしません)そこまで手間と時間をかけてでもクーポン券を使って割引サービスを受けたいと思うお客様というのは、企業から見ると「価格に敏感な人」と考えることができます。そして、そのような人がその地域に何割程度存在するのかを集計し、今後の価格戦略に役立てようとすることも可能です。クーポン利用は売り手にとっては情報を与えてくれる消費者の行動であると考えることができます。