認知の歪み(ゆがみ)とは?ストレスは自分で作りだしている

認知の歪み(ゆがみ)は起こった出来事と思考パターンが関係している

私たちは現実に起こったことをありのままに受け止めているでしょうか。おそらく「そうだ」と答えられるでしょう。しかし、自分にとって受け入れ難いものは見ないようにするでしょうし、事実をそれ以上に大きく見たり小さく見ることもあるでしょう。その場合、現実はぼやけて見えています。例えば、完璧主義の人の思考は小さな失敗であっても、完全な失敗と考え、そのようなことをしでかした自分はだめな人間だと思うでしょう。また、相手から断られたことが単なる偶然の出来事なのに、相手から嫌われたと感じたり、さらには自分は誰からも好かれないのだと悲観します。よく考えてみると、小さな失敗もない完全はこの世に存在しないでしょうし、相手から断られたのも相手の都合や予定が決まっていたからなのかもしれません。人は思い込みや勘違いを起こすものなのです。

このように、起こった出来事自体は1つですが、それに対してどのようにとらえるかは人によって異なります。人は、認知の歪み(ゆがみ)を持っています。起こった出来事に対してどのようにとらえるかでそれがストレスになったり、ストレスにならない場合もあるのです。自分自身がどのような認知の歪みを持っているのか知ることはとても大切なことです。それを知ることで、ストレスがかかりすぎた時や悩んだ場合に認知の歪みに気づき、気持ちの切り替えをしていくことが必要です。




認知の歪みのパターン

精神科医のデビッド・D・バーンズによると認知の歪みには以下の10種類のパターンが存在します。

全か無か思考(all-or-nothing thinking)

物事をゼロか100か、白か黒かで判断しようとする二者択一的な思考を指します。少しでも足りないとか、不完全であると、不合格・欠陥だと判断してしまいます。例えばテストで80点をとってもミスをした20点が気になって、0点と同じように考えて「全然ダメだ」と感じてしまいます。このように考える人は、中間的な判断や曖昧な評価を許容することができない完璧主義傾向にあります。「ちょっと極端になっているな」と気付くことが、この考え方から抜け出す最初の一歩となります。 すべてダメではなく、できていることもあることに気づくことが大切です。

一般化のしすぎ(overgeneralization)

少ない出来事から法則性を作ってしまうことで、うまくいっていないこととうまくいっていることの両方があるときに、うまくいっていないことだけにフォーカスしてしまい、いつも失敗する、次もこの先も絶対に失敗するというように決めつけてしまいます。また、1度失敗するとこの先もずっと失敗が続き、決して成功することはないと考えてしまいます。このような認知をよくする人は、「いつも」と「絶対に」という言葉を使うことが多いです。本当にそれがいつも起こることなのか、この先もずっと起こることなのかは様々な観点から検討することが必要です。

心のフィルター(mental flitar)

出来事の良い面だけを全て遮断してしまい、悪い面ばかりに思考が向いてしまったり、良いことがあっても悪い場面ばかりが思い出されてしまいます。たとえば、みんながほめてくれても、たった一人から批判を受けるとそればかりがずっと気になってしまいます。ほめてもらっていることと批判されたことについてそれぞれ当たっているのか検討することが必要です。

マイナス化思考(disqualifying the positive)

良い結果であっても悪く解釈してしまいます。うまくいっても「たまたまだ」とか「誰にでもできることだ」と解釈し、うまくいったことに対して、正当に評価できなかったり、ほめられても「お世辞で言っているに違いない」と受け取ったりします。物事をマイナスからの方向性だけでなく、良い面からも見ることが必要です。

結論への飛躍(jumping to conclusions)

根拠もないのに飛躍した結論を導き出してしまいます。例えば、自分のそばで小声でひそひそと話しているを見て、「自分の陰口を言っているに違いない」と悲観的な推測をして一方的に傷ついたり落ち込んでしまいます。実際に何をしていたか判断を行う材料をいくつか検討することが大切です。

拡大解釈と過小評価(magnification and minimization)

自分の失敗やミスといったネガティブな事象を過大に評価し、成功や長所を過少に評価します。些細なミスを「この世の終わり」のように過大に捉えたり、成功を「たいしたことない」と過少に捉えてしまいます。
事象について、どのくらいのことなのか客観的に見てみることが大切です。

感情的決め付け(emotional reasoning)

自分の感情を真実を証明する証拠として考えてしまい、理性ではなく感情を根拠に結論付けてしまいます。例えば、練習で成功していても「こんなに不安だから、本番は失敗するに違いない」と決めつけてしまいます。感情以外の基準からも判断することが大切です。

すべき思考(should statements)

「○○すべき」「○○に違いない」といった価値観を持ち、その価値観に従わなければならないと自分を追い込んでしまいます。「○○すべきだったのにできなかった」と罪悪感を抱え、自分を責めてしまいがちです。また、「○○すべき」という価値観に従って行動するため、他人にその価値観を押し付けたり、期待通りにならないとイライラしたり、落ち込みやすくなります。すべきという価値観や判断基準は人によって違うことやその価値観や判断基準は妥当であるか振り返ることが大切です。

レッテル貼り(labeling and mislabeling)

根拠もないのに偏見や先入観を強く持ち、ネガティブなイメージを固定化してしまいます。例えば、「私は人前で緊張してしまうから、うまく話せない」と思ってしまえば思ってしまうほど現実にうまくいかなくなってしまいます。レッテルを貼ることで前向きに考えることができず、物事に取り組む前からあきらめやすくなったりします。先入観を取り払って物事に向き合うことが大切です。

個人化(personalization)

何か良くないことが起きたときに、自分でコントロールすることが出来ないことや関係がないとわかっていることにも、その原因が自分にあると必要以上に罪悪感を感じて自分を責めてしまいます。例えば「雨が降ったのは、私が参加したからだ」と思ってしまいます。
自分がどこまで関わっているのか見ることが大切です。

認知の歪みの改善方法

認知の歪みに気づくこと

本人はずっと同じ思考のパターンでいるので、自分自身の思考パターンや認知が歪んでいると思っていないことが多いのです。自分の頭の中で思い付き範囲に限られますが、もし○○だったらというように誰かになりきって、自分とは違う行動パターンを考えてみるトレーニングをすることもよいでしょう。

人との感じ方の違いに気づく・人から助言をもらう

自分一人で考えてもなかなか気づきにくいものです。同じことを聞いていても人によって反応が違ったり、映画をみたあとにお互いに感想を言い合うと印象に残る内容は異なります。自分一人では気づきにくい思考パターンや認知について、誰かと同じテーマや話題について話すことで自分の思考パターンや認知の違いに気づくことができます。

出来事と感情は分ける

認知したことは出来事なのか、自分自身の感情なのか分けて考えましょう。

現実との対比・現実的な判断

想像上の出来事なのか現実に起きている出来事なのか分けて考えましょう。これから起こることはどうなるかわかりません。まだ起きていないことを想像することは準備をするためには必要ですが、あれもできていないこれもできていないと不安がつのり動けなくなることもあります。不安になったことが現実的なことなのかよく考えましょう。

自分の思考パターン認知の癖を知る

自分の思考パターンがどんな思考パターンなのか考えてみることが大切です。自分の思考パターンが把握できれば、マイナスな思考に陥った時もすぐに気付くことができ、対処できるのです。

自分の個性を知って認知の歪みと思考の癖や思いこみ・勘違いを見つける

このように私たちの感情は、現実がどのように見えているかという私たちの考えで決まってくるところがあります。認知の歪みに気づき、適切な見方をすると、現実がくっきりと見えてきますし、それに伴いマイナスの悲観的な“この世の終わり”という感情も変化してくるでしょう。思考のクセ=自分の個性と捉えることができれば、コミュニケーション能力を大きく伸ばすことにもつながります。