全員から嫌われているということはない

ものごとを誇張し、心は時にウソをつく

人は誰でも苦手な人がいます。けれども、周囲が苦手な人だらけになってしまうことはありません。私たちは人間関係に限らず、悩むときには、ある一定の傾向が見られます。そのうちの一つが、物事を必要以上に誇張してしまうことです。

悩んでいるときの会話に注目してみると、「みんなが」「すべてが」「いつも」という言葉を使う傾向があります。

「会社のみんなから嫌われています」という悩みをもつ人に、明らかにあなたの事を嫌っている同僚の名前を教えてというと、5人くらい名前を挙げたところで詰まってしまうことがありました。

みんなから嫌われているならば、社内全員の名前が挙がるはずです。同じ人に、会社の中であなたに好意を持ってくれる人、いろいろ援助してくれる人、協力してくれる人の名前を挙げるように言うと、3~4人の名前が挙がりました。みんなに嫌われていると言ったけど、好意を持ってくれる人や、仲のいい人もいて、みんなから嫌われていないことに気づくと、ホッとすることができます。

人間関係の「基本的な誤り」

「みんなから嫌われている」と言ったとき、好意を持ってくれる人はいつのまにか頭の中から消えてしまいました。本当は会社の中の数人とだけ仲が悪いのに、全員から嫌われているように思いこんでいたのです。こうした思い込みを「基本的な誤り」の1つ、「誇張」と言います。

「基本的な誤り」には、ほかにも「過度の一般化」や「単純化」というものがあります。
「過度の一般化」とは、特定の現象を見て、全てがそうなっているように一般化してしまう心の働きの事です。学校で友だちとの関係がうまくいかなくなったから、勉強もうまくいかないし、スポーツもうまくいかないと決めつけてしまうような考え方です。
そして、すべてを0か100かで考える「単純化」の発想に傾きます。「皆に嫌われているからもう2度と学校には行けない」と決めつけるわけです。本当は、遅刻して登校しても、時々休んでもいいのですが、そういう段階的な回答を選ぶことができなくなるのです。

私たちが悩みを持つと、「基本的な誤り」によって、正常な判断力を失わせます。本当は自分に好意を持っている人もいるのに、すっかり見落としてしまうのです。
実際は、世の中には、苦手な人ばかりなどということは決してありません。苦手な人もいるということだけです。
「苦手な人がいる。だから、会社に行きたくない」
私たちを苦しめるのは、このような「~だから」という考え方です。しかし、こう考えてみてはどうでしょうか。「苦手な人がいる。だけど、仲が良い人もいる。」そう考えるだけで、気持ちがラクになりませんか。これは、イーブン・イフ(even if)発想という考え方です。何か嫌なことが起きたとき「たとえ○○だとしても~がある」と考えると、すべてが嫌なことばかりでないと気づきます。

ですから、「○○だけど」と考える心の習慣をつけてみてはいかがでしょうか。自分の心の習慣を変えるだけで、ずいぶんと人間関係が見えるはずです。