価格決定にあたって考慮すべき要因は、基本的には、コスト・競争・需要が挙げられます。これらの要因のうち、どれを重視するか戦略や方針によって、原価志向、競争志向、需要志向の3つのアプローチに大別されます。
原価志向の価格設定法
原価志向の価格設定法は、価格をコストに着目して設定する方法です。製品の販売はコストの回収も目的に含まれるため、価格設定でコストを重視することは当然でもあります。原価志向の価格設定方法には以下の3つの方法があります。
1.コストプラス法(原価加算法)
コストプラス法とは、製品を製造から販売するまでにかかったコストに、一定の利益を上乗せして価格を設定する価格決定方法です。価格=直接費+間接費+利益となります。コストと得たい利益が決定すれば価格が決まるため、容易に価格が設定できます。
2.マークアップ法
マークアップ法とは、仕入原価に一定の率で利益を上乗せする方法です。小売業や卸売業などの流通業界でよく用いられる方法です。仕入原価に対して一定の利益率を加えて価格を設定する価格決定方法です。
3.目標利益価格決定法
得たい目標収益を投資額に対して目標とする利益率を達成するように価格を決定する方法です。例えば10万円を投じて、製品Aを10個販売します。得たい収益が1割だとすると、1個当たりの価格は
10万円 × 1.1 ÷ 10個 = 1.1万円/個
目標利益を達成するためには、1個当たり1.1万円で10個販売することによって達成できます。したがって価格は1.1万円となります。
原価志向の価格設定法の課題
原価志向は価格設定が原価をもとに計算ができる一方、顧客を考慮に入れていないため、顧客が買ってもよいと考えている価格と乖離してしまうリスクがあります。顧客が支払っても問題ない価格より高い価格を提示すれば購買に至ることは難しいと言えます。また、反対に低い価格を提示すれば、本来得ることができる利益と比べて、より多くの利益を得る機会を失ってしまいます。
競争志向の価格設定
競合製品の価格を基準にして価格を設定する方法です。競争志向の価格設定には、以下の価格設定方法があります。
1. プライスリーダーを意識した価格設定
競合や業界の価格支配力を持つ企業(プライス・リーダー)の動向を念頭に置いて価格を設定する方法があります。価格設定の基準が自社ではなく、他社にあることが特徴です。プライスリーダー(price leadership)とは、例えば、ある業界において、市場で価格支配力を持ち合わせている企業、価格先導者のことを指します。プライスリーダーは、他の企業の価格設定に対し影響力を持つため、それ基準に置く形で価格を決定します。競争志向の価格設定の課題
競争志向の価格設定は、価格競争を起こしやすい設定法であり、価格競争は競争の最終的な勝者であっても消耗戦となる競争状況なため避けたい状態です。そのため、価格のみの差別化から脱却する方法を常に模索しなければなりません。需要志向の価格設定法
消費者が知覚する価値に基準を置いて価格を設定する方法です。原価志向と異なり、コストよりも消費者に焦点を当てています。需要志向の価格設定方法には以下の2つの方法があります。1.差別価格
セグメントごとに価格を設定する方法です。例えば、電車の運賃や映画館などの入場料は大人と子供、男性と女性のようにターゲットで料金が異なります。休日料金や深夜料金のように時間帯によって需要が変わるのに応じて料金設定を変えるという方法があります。
これらは全て差別価格法にあたります。差別価格法は同一の商品あるいは原価があまり変わらないほぼ同じ商品を異なるセグメントに向けて販売する場合に有効な方法です。
同じ商品でも違う価格で提供することの効果(価格差別)とは?
2.知覚価値法
消費者が製品にどれだけの価値を知覚しているかに基づいて価格を設定する方法です。マーケティング・リサーチなどによって売れる価格帯を発見して、その価格帯で価格設定する方法です。リサーチによって売れる価格帯が判明したら、需要の価格弾力性も加味して、最も売れると思われる価格を設定します。